水車のイロハ

水車とは

水で回る車、水車。英語ではWater (水)Wheel(車輪)といいます。
水が水車に力を及ぼし、回転する。その回転により生み出される力を利用して、杵(きね)や臼(うす)を稼働させていました。
回転した軸に歯車を組み合わせ、回転→回転 の動力伝達をしたものが、臼。
回転した軸に棒を突き出し、回転→直動 の動力伝達をしたものが、杵。
人にかわり、延々と仕事をしてくれる機械化の原点ともいえるのが、水車や風車です。大きな力を必要とする仕事(作業)をさせる場合は、それに応じた水の力を水車に加える必要があります。

水の持つエネルギー。それは、水量、流速、そして高さで決まります。どれも数的に大きければ大きいほど、水の持つエネルギーは高まり、水車の回転力も高まります。
ここで重要なのは、水車とは”エネルギーの変換媒体”であるということです。

入力:水のエネルギー → 水車 → 出力:直動(杵)もしくは回転運動(臼)

よって、エネルギーの変換媒体である水車が、どのぐらいの効率で、出力側に伝達できるか、これが水車にとって重要な要素となります。水の流れ、量を受け止める水車の羽板の形状や角度、幅。これらをしっかりと考慮した水車とそうでないものは、エネルギーの変換効率に大きな差を生じます。 全国各地に設置された水車の中には、その配慮がなされておらず、水の持つエネルギーを大きく取りこぼしているものが見受けられます。水車で発電をする場合や、杵・臼を連動させる場合は、要注意です。

水源がないと、水車はまわせない!?

水車をまわすのに、どこから水をかけるかで、その呼び名が異なります。
水車に対し水を掛ける位置が上、中、下の順で、うわ掛け、むな掛け、した掛けと呼ばれ、それぞれの掛け方によって、水車の構造も異なります。
昔は、豊富な水がある場所に水車や水車小屋が設置されていました。その水を取り巻く自然地形に応じて様々な形の水車が利用されました。 川の流れを利用する場合は、下掛け水車。その流れを利用し、水を高い場所に汲み上げたい場合は、くみ上げ水車。流れてくる水に落差がとれる場合は、上掛けや胸掛け水車です。

現代では、その水の流れを人工的に作り出すことができます。それを可能にするものが電動ポンプです。
電動ポンプを利用することで、水の流れのない場所でも水車を回すことができます。

現代の水車の軸には、ベアリングを用いているものがほとんどです。よって、水車の回転にはほとんど摩擦がないため、人の背丈よりも大きな水車であっても、指の力で簡単にまわすことができますし、消費電力の少ない小さな電動ポンプでくみ上げた水で簡単にまわります。循環させるだけの量の水をためた小さな箱池を併設することで、水のない地域、場所そして屋内や屋上でも、水車を設置することは可能です。


玄関先設置例:防水シートで簡易池をつくり、小型水中ポンプで水を循環

 

堀川工房のつくる水車

庭や公園でゆったりとまわる水車。しかし、 その環境は、想像以上に過酷です。
木製品が、相性の悪い水をかけられ、ぐるぐると回される・・ それが水車となれば、24時間365日、安定した回転を求められる ということになります。

回転という動的な利用のため、その構造体には、それに耐えうる構造が必要となります。木製品の加工がどれだけ得意でも、家具の延長線上で製作された水車では、すぐにバラバラに壊れてしまうでしょう。

↓水車の故障例 円周分割された輪の組立部分の落下


水車の回転時に発生する遠心力に耐える構造がどれだけ盛り込まれているか。どこまで配慮されているか。 水車の寿命を決定する大変重要な要素です。
木工技術に長けた方が、見様見真似で製作された水車を拝見することもありますが、この寿命を決定する構造が盛り込まれていないことが多々あります。設置時には新品であっても、2~3年で致命的な故障が生じることが予想できます。

堀川工房の製作する水車には、 長期にわたり、水車が安定してまわるよう、その構造には様々な配慮を盛り込んでいます。また、水車の外観、デザインも重要だと考えています。 水車の輪、棒が、太かったり、狭かったりすると、全体の外観が不格好になってしまいます。 耐久性も重要ですが、見た目に美しい寸法配分があるはずです。

水をかけて回ればなんでもいいわけでなく、 見た目にも美しいバランスの水車を作りづつけたいと考えています。